分 子 栄 養 学 その1



分子栄養学の基本


分子栄養学というと堅苦しい響きですが、
簡単に言えば、食べ物にはいろいろな栄養が含まれており、
その栄養素をバランスよく摂ることで、
病気を予防する、または病気を改善するという発想に基ずく学問で、
「生化学」「分子生物学」の二つが合体し、分子栄養学になります。

栄養には三大栄養素といわれるものがあります。
タンパク質、炭水化物、脂肪です。
これは人が生きていくうえで土台となる栄養素です。
これらの栄養素は健康を保ったり、正常な新陳代謝を体内で行うために、
とても重要な役割を持つものなのです。
この三大栄養素に、ビタミンとミネラルを加えて五大栄養素ともいわれます。

分子栄養学では、これら栄養素のそれぞれの役割を最大限に把握し、
人それぞれ、身体の状況に応じた栄養素を吸収させ、
病気を予防することを目的としています。
同時に、病気になったときに、どういった栄養素の組み合わせが
その病気の治癒に役立つかをも考えていくものです。



分子栄養学は遺伝子の栄養学

平たく言えば、生物の生きるシステム(生命現象)を科学で解明して行くのが
分子生物学と生化学だといえます。
極端な言い方では「生きているというのは代謝である」となります。
代謝していないものは生きていない、
代謝がとまったときは死だということです。
そして、代謝を促してくれる酵素は、遺伝子ということになります。

遺伝子の最終的な分野にまでいくと、
人間も、大腸菌も、ウイルスも同じ遺伝子から
できているものだということになってしまいます。

ここで間違えないでほしいことは、
DNAが遺伝子であるということは、正確なことではありません。
DNAの中に存在する遺伝子は、たった5%しかないのです。
残りの95%を解明するのが、
生化学とか分子生物学になります。
この分野は1990年に入ったことから学問として伸びています。
それを基に栄養学で当てはめたらどうなるかというのが
分子栄養学で、よく言われるカロリーの栄養学ではなく、
分子レベルで考える栄養学です。

では、その分子とは何かですが、
分子は遺伝子という意味でDNAの分子を指します。
わかりやすくいうと、
遺伝子生物学、遺伝子栄養学というようになるわけです。

この分子栄養学の発想は以前からありました。
ノーベル賞を2回受賞したライナス・ポーリング博士は90歳以上まで長生きした方でした。
博士はビタミンCのカプセルを大量に飲んでいました。
「ビタミンCは大量に飲まないと不足する」のです。
つまり、
メガ・ビタミン療法=大量に投与するビタミン療法
というのがありますが、博士が最初に実践したのです。
大量のビタミンを与え病気を治す、防ぐという考えで
当時博士は、分子矯正医学と名づけました。
今の分子栄養学に近い考え方です。

ちなみにビタミンCはどのくらいの頻度でなくなるかというと、
例えば道を歩いていたときに、
後ろからポンと方を叩かれ
「よう、○○」「おっ、○○じゃないか」と驚いた瞬間、
600mgがなくなります。
厚生労働省が勧めている日本人の1日の摂取量は、
100mgです。
この大きな矛盾を皆さんはどう思われますか。
ただし、これが今までの栄養学の考え方です。

昔、航海は長い日数を要したため、食料の調達が思うようにできず、
ビタミンCの補給ができなくて壊血病が多く発生したため、
洋上で壊血病を防ぐため、日本の医者は一日100mgの
ビタミンCが最低必要量と考えたのです。
壊血病はビタミンCが不足したときに
一番初めに出る病気のサインでなく、最終警告なのです。
そのため理屈として「最終警告が出ないための栄養を摂ればよい」ということなのです。
極端に言えば、壊血病にならなければ、ビタミンCはいらないとの考えです。
このような事情で日本は、栄養学の発展が遅れたのです。

生理作用と薬用作用という言葉があります。
100mgを摂取していれば壊血病にならないという、
ビタミンCの役割を生理作用といいます。

一方、ライナス・ポーリング博士がビタミンCを大量に飲んでいた話をしましたが、
これは生理作用でなく、薬理作用になるのです。
ただ矛盾するのは、ビタミンは薬ではないということです。
しかし、通常の100倍を摂ると、どうなるか。
まず、高脂血症が治ります。
また、がんになった場合に免疫力を上げるという薬理作用が確認されています。
言い換えれば、薬と同じような効果があるのです。
ですから、ライナス・ポーリング博士は、栄養は大量に摂るといっているわけです。



栄養素の役割と働き

私たちが生きるうえで、重要な役割を担っている栄養素とは、
どのようなものかをタンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラルと
簡単に触れておきましょう。

タンパク質、私たちの身体の体内組織や、血液をつくってくれる栄養素です。
体内で貯めこむことができないので、常に補給してあげる必要があります。
また、この栄養素は20種類のアミノ酸から構成されますが、
10種類のアミノ酸は体内で作ることができないので、
食事を通して摂取する必要があります。

炭水化物は、脳や筋肉を活動させるエネルギー源となる栄養素です。

脂肪も、体内でエネルギーへと変換され、生きていくうえで欠かせません。

ビタミンは、少ない量で身体が代謝を行うための有機質の栄養素です。
ビタミンそのものにカロリーは含まれておらず、
三大栄養素が体内でエネルギーや血液や肉となる際の、
潤滑油的な役割を果たします。

ミネラルですが、地球には約100種類の元素があり、
人の身体の96%が酸素、炭素、水素、窒素の
四つの元素で構成されています。
これらの元素は有機質なのですが、
これら以外の生体元素をミネラルといいます。
この元素は無機質でビタミンとは異なり、
人の身体を構成する材料となります。
また、ビタミンとミネラルはお互いが助け合いながら、
身体の機能維持のための働きをしています。
しかし、療法とも体内でつくることができないため、
食事を通していつも身体に必要な量を摂取していないと、
不足がちになってしまいます。

栄養素には三つの大きな働きがあります。
@ エネルギー源になる
A 身体の構成成分になる
身体の筋肉や血や肉になる
B 代謝です

この三つの栄養の目的を果たすためには、
身体にバランスの取れた栄養を吸収することが大切です。
ビタミンやミネラルは代謝に関わってきます。
エネルギー源になるのは炭水化物です。

近年、日本人に糖尿病が多くなったのは、
長い間にわたり雑穀類を食してきたことが挙げられます。
雑穀類というのは多糖類です。
糖には、多糖類、単糖類、二糖類から四糖類までいろいろなものがあります。
砂糖は二糖類、果糖は単糖類です。
そして、白米は多糖類といわれています。
この多糖類を日本人はずっと食べてきたのです。

この多糖類の特徴は、体内ではすぐに消化せず、
ゆっくり消化した分から糖分となり血液の中に入っていくのです。
したがって、食事をしてからの血糖値は緩やかに伸びるため、
インシュリンがあまり出ないのです。
そのため、結果として日本人は
あまりインシュリンを必要としない食事をずーとしてきたわけです。

ところが、ここ数十年の間に贅沢になり西洋化することで、
それまでの穀物や野菜中心の粗食的な生活から肉食中心に変わってきました。
そのうえ、自然界のものを摂取する生活から、
添加物などの化学成分を含む
加工食品中心の生活に変化してきたことは、
いろいろな意味で問題であると言わざるをえません。