化学物質と日常の生活

1. 私たちは化学物質と暮らしている!
 世界は化学物質でできている?
 
 科学的には世の中の物質は全て「化学物質」でできていると言えます。
 しかしここでは、人の手で精製、合成される人工化学物質のことを指すことにしましょ う。
 今日の私たちの便利で快適な暮らしはそのような化学物質によって支えられています。
 気づかないかもしれませんが、衣食住のあらゆる場面で使われてお り、結果的に水や空気と同様に地球上のあらゆる所で化学物質の存在が確認されています。
 
2. 大量生産 大量消費 大量廃棄
 未来にもおよぶ問題
 
 私たちはオゾン層の破壊や地球温暖化の問題を通じて、人間活動の影響力の大きさを知らされました。
 化学物質の多くは化石燃料をはじめとする天然資源を原材料に製造されます。それらの生産、消費、廃棄は将来的にも増大する一方です。
 地球は有限であり、いつまでも続かないことは明白ですが、そうなる前に私たちの健康や環境が持ちこたえられないでしょう。膨大な化学物質の負の遺産を次世代に引き渡すことは許されません。
 
3. 川から海へ、生き物から生き物へ
 地球上のいたるところに!
 
 里山からメダカやドジョウ、ホタルなどの小動物が消え、それらを餌とするトキやカワウソも見かけなくなりました。 陸地から遠く離れた公海のカツオやアホウドリ、クジラ類、ホッキョクグマなどの体内に高濃度の有害化学物質汚染がみられます。

 生態系に何が起きているのでしょうか?
 このままでは「沈黙の地球」となるかもしれません。
 人間が環境に捨てた汚染物質は食物連鎖を通じ濃縮され、まわり回って人間に戻ってくることもあるのです。
 
4. あなたも、私も おなかの子にも
 世代をこえた汚染
 
 血液や母乳の検査によって、一般の人が多数の有害化学物質に汚染されていることがわかってきました。本人が一度も使ったり、触れたりしたことのない化学物質も検出されています。
 また、汚染はおなかの胎児にまで及んでいます。
 無事にこの世に生まれても、母乳を介してさらに有害化学物質が取り込まれることも心配されています。
 
5. 安全を確かめるのは国、企業、それとも私たちの体?
 いったい、どれだけの化学物質が?
 今日世界で使われている化学物質は10万種ともいわれますが、その大半は人や環境に対する安全性が十分確かめられていません。  安全性試験には多額の費用と時間を要し、国が一つ一つ調査する従来のやり方では何百年もかかります。
 日本においても同様な状況にあり、安全かどうかわからないまま製造や使用を許している現在の化学物質政策は早急に見直しが必要です。
  私たちや子どもたち自身を、実験台にするわけにはいきません。
 
6. 疑わしいのになぜ使い続けるの?
 安全が確認されていない?
 現在使われている化学物質の中には発ガン性をはじめとして健康に深刻な影響を及ぼすおそれのあるものが多く存在します。
 有害性が強く疑われても科学的に因果関係が証明されない限り、法的な措置がとられません。
 その結果、被害が拡大し、取り返しのつかない結果を招いた事例が何度も繰り返されています。
 科学的に不確であっても、適切な予防的措置を求める「予防原則」が今、国際的に提唱されています。
 しかし、日本では行政、産業界などの抵抗が強く、いまだ化学物質政策に明確に位置付けられていません。
 
7. もっと安全で健康な社会へ
 進歩の代償にしないために
 
 科学・技術の進展、産業・ライフスタイルの変化などに伴い、私たちと化学物質の関係は急速に変化しています。
 日本の化学物質政策の中核はおよそ35年もの昔に作られた法律が担っていますが、もはやその場しのぎの改正では直面する問題に対応しきれないところにきています。
 今こそ、予防原則を基盤として知る権利(情報公開)や市民参加を取り入れた、新たな化学物質規制をゼロから作り直すべきです。
  すでに欧州ではそのような革新的な法規制「REACH」(リーチ)が成立しています。
 
8. 地球を丸ごとデトックス
 有害化学物質を無くしてゆこう!
 
 化学物質には国境がなく、さまざまなルートで化学物質は行き来し、人の手で完全にコントロールすることは不可能です。 最終的には地球全体で有害化学物質を廃絶するしかありません。
 実は、そのような壮大な国際的取組がすでに始まっているのです。
 それは「国際化学物質管理戦略」(SAICM、サイカム)と呼ばれ、「2020年までに化学物質による人の健康や環境への悪影響を最小化」するというゴールに向け、基本的方針や具体的な行動計画などが2006年に取りまとめられました。
 それを受け各国は「SAICM国内行動計画」を市民を含む全ての関係者参加のもとで策定することになっています。さて、日本ではどうなっているのでしょうか?
 
9. まずは知ることからはじめよう
 私たちにできることは?
 
化学物質の知識がなくても、私たち市民にもできることはたくさんあります。
 
知る
 商品中に含まれ、あるいは身近な環境中に排出される有害化学物質についての情報を、私たちには知る権利があります。 行政や事業者に情報公開と市民にもわかる説明を求めることが大切。
 
行動
 正確な情報に基づき、自分や家族あるいは地域を守る行動を。 その極意は、「安全性が不確かなものは、使わず、近寄らず、もっと減らして、撒き散らさず」(詳しくは「我が家の化学物質予防原則のすすめ」へ)
 
参加
 個人の取組には限界があり、国の政策にも目を向けよう。行政や専門家だけに任せず、声をあげ、意思決定への参加を求めよう。もちろんNGO 等の支援を通じた参加もありです。今日の私たち一人一人の行動が、未来世代の安全と健康を決定づけることを忘れてはなりません。
 
 
 
 我が家の化学物質予防原則のすすめ
 
 化学物質による人の健康や環境への有害な影響を未然に防ぐには、国の化学物質政策の基盤に「予防原則」(*)が位置付けられることが重要です。しかし産業界などの抵抗も強く、その道筋はいまだ見えません。
 とはいえ日々化学物質に囲まれ生活している私たちは、何もせずただ待つわけにはゆきません。そこで以下のような「我が家の予防原則」を定め、少しでも化学物質によるリスクを減らせるライフスタイルへの転換をおすすめします。
 
基本原則
 
1.買わない、使わない、近づかない
 何が使われているか情報が得られない、あるいは安全性に疑いのある化学物質を使った製品や農水産物はできるだけ避け、使わずに済ます方法やより安全な物質に切り替えよう。
2.減らす、間をおく、防御する
 やむを得ず利用しなければならない場合は、使用量を最小限に、回数も減らそう。場合によってはマスク、手袋などで体内に取り込まない工夫を。
3.汚さず、捨てず、ばらまかない
 使用や廃棄の際に環境を汚さないで、あなただけの地球ではありません。化学物質に応じた適切な処理・処分を忘れずに。
キーポイント
4.妻子危うきに近寄らず
 女性は家事・化粧など様々な化学物質に触れる機会が多いことに加え、デリケートな胎児を宿すことから最大限の注意が必要です。また乳幼児は大人より影響を受けやすく、行動も予測しがたいので目を離せません。
 
5.口は災いの入口
 化学物質の多くは飲食物を通じ体内に入ります。幼児はモノをなめたり、口に入れます。食品の容器やパッケージも含め、あらゆるルートをしっかりチェック。  
 
6.食物は選べても、空気は選べない
 建物など閉じられた居住空間の空気は主要汚染ルートの一つです。タバコは注意しても、建材、家具等からの揮発や化学物質の付着したハウスダスト(家庭内の紛塵)には気づきにくいものです。こまめな掃除と換気を。
7.知らぬが仏とならぬよう
 情報のアンテナを張りましょう。科学的に確かな情報は化学物質の海を渡る羅針盤ですが、科学は日進月歩です。知らぬばかりに取り返しのつかないことにならぬよう。
8.温故知safe(おんこち・せいふ)
 故(ふる)きを温(たず)ね、安全を知る。おじいさん、おばあさんの時代は化学物質フリーでスローなシンプル・ライフでした。
むかしのクリーンな暮らしを再発見しよう。
 
 
 
(*)「予防原則」:人の健康や環境が脅かされている場合、その因果関係が科学的に証明されていなくとも、何らかの予防的措置をとるべきとする考え方。