科学(化学)を学ぼう




科学的基礎知識

 

11.酵素とは何か

高分子を低分子化するとき、必ず必要なのは酵素である。
この酵素とはどんなものなのだろうか。

私たちは日常の生活の中でも、
酵素という言葉をよく聞く事がある。
しかし、「酵素とは何ですか?」と聞かれて答えられる人は、
どのくらい存在するのだろうか。
多くの人は、よく分からないのが酵素ではないだろうか。


地球上で一番最初に酵素をつくったのは、微生物といわれている。

もとろん誰も見たわけではなく推論である。
生命活動を支える酵素は大変多く、
すべてが確認されてはいない。
ただ、はっきりしているのは、
酵素はタンパク質でできている。
すなわち、アミノ酸がつぎつぎつながってできたものといえる。
ではアミノ酸はどのようにして誕生したか。

私たちはこうした事に対し、深く考えた事はない。
そこで、どのように微生物が誕生し酵素を作るのか、
地球上の生命誕生を含めて、推論してみようと思う。



生命誕生は、いろいろ推論されている。
最も広く受け止められているのが、
ミラーという学者の推論である。

ミラーは、原始時代の大気(空気)の成分を追求した。
水素、メタン、アンモニア、水など
原始時代の大気と考えられる物質を集め、放電管の中に閉じ込めた。
そして、高い電圧で放電した。
ミラーは雷の稲妻を発生させたかったのである。
稲妻は、雷と同時に発生する光であり、
この光に着目したのである。
雷の光はさまざまな物質を変化させる。

原始時代の地球上では、毎日大雨が降り、
いたるところで強い雷が発生していたと考えられる。
当時の地球の表面は、まだ高温であり、
降った雨はすぐに蒸発したと推測される。
地球全体がすごい夕立の連続で、
すごい量の稲妻が発生していたと考えられる。

ミラーは、原始大気の中で稲妻が連続して起きると
何が起こるか確かめたかったのである。
みらーは、高圧放電という方法で稲妻を発生し続けた。
1週間以上高圧放電を続けた後に、
アミノ酸分析を行ったところ
驚く事に10種類のアミノ酸が放電管の中に生成されていた。
このことによって、
アミノ酸は、「原始時代の大気に稲妻が作用して生成された」
とする考え方が、定着した。

その後、多くの学者や研究者たちによって、
20種類のアミノ酸全てが生成されると証明された。
生成されたアミノ酸は、
やがて海の誕生とともに海中に溶けて
存在したと考えられている。


こうなれば、生命誕生は説明しやすい。

アミノ酸同士は繋がる事が分かっている。
アミノ酸は繋がりながら長い結合体になる。
この結合大河タンパク質である。

一方、海水中にはリンが溶けていて、
リン酸という物質が存在していた。
アミノ酸にリン酸が作用すると
核酸と呼ばれる物質が出来る。
この核酸がDNAと呼ばれる遺伝子になったと考えられている。
遺伝子も海の中で誕生したといえる。

やがて、タンパク質と遺伝子は
薄い境界膜で内外を区別されるようになったと考えられている。
こうした境界膜を、現在では細胞膜と呼んでいる。
やがて遺伝子は細胞膜の中で遺伝情報を伝える。
こうなれば1個の単細胞生物が誕生する。
これが微生物といわれる生命体である。

最初に地球上に微生物が誕生したのは、約40億年前と推定されている。
そしてこの微生物が細胞分裂を行うようになった。
これが、進化のスタートである。
一つの細胞が分裂するということは、
同じ遺伝子を別の細胞に移す事である。
こうして同じ種類の複数の細胞をもつ生物が誕生する。
これが多細胞生物と呼ばれるものである。

生物は、同じ種類の細胞を大量に作ることによって、
さまざまな形や機能を持つ事になった。
そして、自然の激しい環境の中で、
その環境に適応する工夫をした生物だけが、
生存し続けたのである。
これが進化論の基本的な考え方である。


微生物が行った代表的な工夫が、酵素を作ることであった。
生き残りをかけ、微生物たちは
体の中に取り入れたアミノ酸を自分で結合した。
ということは、自分の体内でタンパク質を作り、
そして、このタンパク質を外に出すようになる。
目的は、体外物質を自分の都合の良いように変化させるためである。
この、物質変化に関係するタンパク質を、酵素と呼ぶ。

現在では、物質変化に関係するタンパク質は、
植物や動物の細胞でも作られるようになった。
もちろん、人間の体の中でも多くの酵素が作られ、
さまざまな方法で、生命活動を守り続けている。

たとえば、人間の口の中でアミラーゼという酵素を唾液と共に出す。
このアミラーゼは、でんぷんを分解し、
ブドウ糖に低分子化する作用がある。

ご飯を長くかんでいると、
だんだん甘みを感じるようになる。
これは、酵素アミラーゼによって、
ご飯の中のでんぷんがブドウ糖に変化したためである。
このとき、酵素であるアミラーゼは全く変化しない。
このように、自身は変化せず他の物質の変化を助ける物質を、
専門的には触媒という。
化学工場では、金属などの無機物を触媒に利用し、
さまざまな物質を変化させている。

酵素という物質は、生命体に関係する触媒である。
生命体の中のさまざまな物質を分解したり、
消去するため自分自身は変化することなく働いている。
金属のような無機物触媒は、複数の化学変化に対し、
触媒作用があるが、酵素の場合は、
一つか少数の限られた化学変化にしか
触媒作用は見られない。

リパーゼは、脂肪を分解するときだけ作用し、
アミラーゼはタンパク質を分解するとき作用する。

私たち人間は、食べたものを酵素によって分解消化し、体内に吸収する。
酵素の働きは、分解消化に限らず、
脳内化学物質やホルモンの消去など多様な面にわたり、
生命活動を支えている。

人の生命活動を活性する上で欠かす事のできない
栄養素の低分子化を完成させるには、
どのような微生物から酵素を確保するかが、重要な課題になる。
これは、バイオテクノロジーという技術である。