身体の健康と栄養のはなし   栄養学から考える食事と予防    ページ 1
  
  マクガバンレポートから始まった現代栄養学
 アメリカにおける現代栄養学の源は、1975年にアメリカ上院栄養問題特別委員会によってまとめられた「マクガバンレポート」でした。
 
 当時アメリカでは、心臓病だけでもアメリカの経済は破綻しかねないといわれるほど医療費が増大していました。  
 そのレポートでは、心臓病をはじめとする諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした「食源病」であり、薬では治らないと結論づけ、高カロリー、高脂肪の食品つまり動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂るように勧告しています。
 そして、そのレポートの中で最も理想的な食事は、日本人が元禄以前に食べていた食事であると明記されたのです。元禄以前の食事とは、精白しない穀類を主食とし、季節の野菜や魚介類といった内容になります。
 こうした背景もあって、アメリカ国内はもとより世界中で日本食ブームが起こりました。
  
 1983年に創設された食事ガイドライン委員会は、マクガバン委員会以降の新しい研究を踏まえ、その指針のひとつとして、食べる食品の種類について以下のように書き加えられました。
 「人間の生存および健康維持のためには40種類以上の栄養素が必要である。つまりいろいろな種類のビタミン、ミネラル、アミノ酸、必須脂肪酸、またエネルギー源としての炭水化物、たんぱく質、脂肪である。これらの栄養素はバランスのとれた食事によって摂取され、そのためにはいろいろな種類の食品を食べる必要がある。」
  
 1996年、日本でも厚生省(現・厚生労働省)は、がん、脳卒中、糖尿病などの総称としてこれまでの「成人病」と呼ぶことをやめ、これらの病気が年齢よりも日常の食事、運動、喫煙などの生活習慣によって引き起こされるものであると考え、「生活習慣病」と呼ぶように変更されました。
 現代日本においては小中高生の3〜5人にひとりは肥満もしくは高コレステロールなどの生活習慣病予備軍であるという、恐るべきデータがあります。 また1997年に日本人の20〜60代を対象に行なわれた検査によると、日常生活に支障がないと判定された健康な人はわずか5%にすぎず、かなり高い確率で生活習慣病になる可能性がある人が6割に及んでいました。
  
 【メタボリックシンドロームについて】
 メタボリックとは「代謝」の意味で、代謝症候群ともよばれる複合生活習慣病。血糖値や血圧がやや高く、お腹が出てきた人をさす。食べすぎや運動不足が原因とされるが、血糖や血圧、中性脂肪の値が極端に悪いわけではない。 しかし糖尿病、高血圧症、高脂血症に重複してかかった場合、放置していると動脈硬化になりかねないレベルである。沖縄県の豊見城中央病院糖尿病・生活習慣病センターの田仲秀明所長は、沖縄県男性の30%がこれに該当すると指摘する。 戦後のアメリカ軍占領下において沖縄県には脂肪分の多い食生活が浸透しており、さらに車社会であるため歩く機会が少ない。 そうした生活スタイルの変化が、メタボリック・シンドロームの原因になったという。
 
  肉食中心の食生活がもたらす健康障害
 アメリカの現代栄養学の基礎となっている「マクガバンレホート」では、脂肪やタンパク質を過剰摂取することによってガンをはじめとする生活習慣病の発生率が高まる恐れがあることが報告されています。
 この中で、動物性食品を減らして、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂ることが提唱されています。 特に肉、乳製品、卵といった動物性食品から脂質やタンパク質を過剰摂取すると、生活習慣病の危険性が高まります。  
 具体的に動物性食品にどのような問題があるのかについて、以下に代表的な例をご説明いたします。
  
 脂質の主成分である脂肪酸は、飽和脂肪酸と不和脂肪酸とに分類されます。
 陸上の動物に多く含まれるのは飽和脂肪酸であり、飽和脂肪酸はコレステロール値を上昇させ、血液を流れにくくしてしまう性質があります。
 一方、植物や魚の脂肪に含まれる不和脂肪酸はコレステロール値を下げ、生活習慣病を予防する働きがあるといわれています。
 ビタミンAは、緑黄色野菜に多く含まれるβ‐カロチンと、動物性タンパク質に含まれるレチノールとの二つに分けられます。
 β‐カロチンは体内で必要な分だけビタミンAとして消費されるので過剰症になる心配がないのに対して、レチノールには過剰症があり、とくに妊娠初期の過剰摂取は催奇形性の原因になるともいわれています。
 このように、脂質、ビタミンAといった同じ種類の栄養素であっても、動物性のものと植物性のものとでは、その性質に違いがあるのです。
  
 ただし、一部のビタミンやミネラルには動物性食品に多く含まれ、植物性食品に少ないものもあります。
 個人差もあるので、個々の体質によって考えなければいけない問題ですが、ことに化学肥料やハウス栽培の影響で、野菜に含まれるビタミンやミネラルの含有量が昔と比べて激減しているといわれている現状においては、栄養バランスを摂るために、野菜や穀類を中心とした食事を基本としながらも、動物性食品も魚を中心に適量に食べるという考え方が正しいのではないかと思います。
 
 玄米菜食などの食事療法は有効か
 近年は健康ブームで、玄米菜食が健康増進に効果があると言われ、菜食ブームが起こってきております。
 ところが、この「菜食」の中にも様々な主張があり、マクロビオティックのように野菜を煮て食べることを指導するものと、ゲルソン療法のように生野菜を食べるべきだと指導するものがあり、それぞれが自分の食事法が最も正しいと主張していますから、私たちはいったい何が正しいのかがわかりません。
 日本ホリスティック医学協会会長で医師の帯津良一氏は、ゲルソン療法を行なっている患者の例を挙げ、「野菜ばかりで塩分もない、楽しみのない食事を続けていると、だんだん患者さんの表情が険しくなってきて、最後には元気がなくなる。 制限をする食事療法というのは意志の力が要る場合があり、誰にでも通用する万人向きのものではない」と述べています。
 食事の目的には、栄養の摂取と楽しみとがあります。栄養バランスの偏った食事を長く続けるところにも、おいしくない料理を無理に食べて心の充実の無いところにも、健康はありません。
 ただし、マクロビオティックなどの指導の中には、玄米菜食を貫きながらも、味も美味しくいただけるレシピが開発されているようです。
 しかしながら、このレシピで料理を作ろうとすると、それに合った食材探しに苦労をします。自分で農業を営み食材を自給自足できる人ならばともかく、そうではない人がやろうとすると材料費という面でも非常に高くつきます。
  
 また民間療法の中には、個別の体質の違いを考慮せず、指導者自身の体験だけに固執して物事を白と黒とに分けてしまっているものも見受けられます。 ある人には有効でも、ある人には有効ではないというケースもあるのではないかと思います。
  
 現代医学の臨床試験が複数の被験者で行うことには意味があります。
 帯津良一氏と親交の深いフーズ&ヘルス研究所の主宰者、幕内秀夫氏は、「多くの民間療法の指導者は、自らの病気を自ら考えた食事療法で治した人であり、自己体験が絡んでいるので説得力はあるが、実際には健康や病気とは食生活だけで語れるものではなく、極端な食事療法を行なうことによって、かえって調子が悪くなってしまう場合も少なくない。 このような食事療法は結局は偏食であって、短期間で行なうのならば何らかの効果があるかもしれないが、長期間実行することには問題がある」と警告しています。
 幕内氏はさらに、玄米食を家族全員で実行しようとすると必ずといってよいほど「玄米はまずいからいやだ」と思う人がいてもめることがあり、家族がもめるぐらいなら白米のままのほうが良いと戒めています。
  
 アメリカで行なわれた研究報告では、糖尿病の患者に動物性食品を一切摂取しない完全菜食療法を行なったところ症状の改善が認められたことが発表されており、ある種の病気の症状を改善されるための手段のひとつとして、このような食事療法の有効性を否定することはできないと思います。
 また、東洋医学でいう「気」の理論から言っても、玄米や野菜は非常に良い食品です。
 本来的に玄米や野菜は体にとても良いもので、マクガバンレポート以降の現代栄養学の中でも、精白しない穀類を主食とし、季節の野菜を中心に食べることが理想的な食事だといわれています。
  
 ただし肉や魚を一切食べない食事を長く続けると、一部のビタミンやミネラルが不足しがちになります。 植物性食品だけですべての栄養バランスを整えようとした場合に、そのための食事のレシピを考えると難易度が非常に高くなるのです。
 玄米菜食でよく問題になるのはビタミンB12ですが、これは毎日海苔を1枚食べていれば補給できます。(ただし、海苔を毎日食べて飽きなければですが。)
 むしろ200種類以上の酵素の働きに関与していると言われるミネラルである亜鉛のほうが問題ではないかと思います。亜鉛は皮膚が弱い、抜け毛が多い、情緒不安定、性機能不全などの方には欠かせない重要なミネラルです。
 また亜鉛は大豆に多く含まれるフィチン酸と一緒に摂ると、吸収率が下がってしまいます。
  
 大切なことは「中庸」の考え方ではないかと思います。「中庸」とは、極端に偏らないこと、執着しないこと、そして全体を受け入れることです。ホリスティック医学はこの考え方に基づいています。
 またホリスティック医学では、心の問題も大切にしています。
 偏食には充分に気をつけながらも、食事は美味しく楽しく、感謝の気持ちを持って食べることを忘れないことが重要なのではないでしょうか。
 
  生活習慣病の原因は活性酸素
 老化や生活習慣病の大きな原因とされるのが「活性酸素」です。
  
 酸素は人間が生きる上で必要不可欠なものですが、体内でこの酸素を利用し様々な化学反応が行なわれる過程で、電子を1個しかもたない(通常は2個)不安定な酸素、つまり活性酸素が生じてしまうのです。  
 活性酸素は、他の物質から強引に電子を奪おうとする性質があり、このことを「酸化」といいます。
 酸化は生物の体内だけで起こるものではなく、たとえば鉄が酸化するとサビになります。
  
 活性酸素が細胞の脂質から酸素を奪うと、奪われた脂質は「過酸化脂質」となって細胞を老化させ、動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞など体に様々な悪影響を及ぼします。 また、活性酸素によって遺伝子が傷つけられると発ガン遺伝子(もともと正常な遺伝子が異常を起こしたもの)が活性化されて、ガンを発症させる原因にもなるのです。 そして塩分や脂質の多量摂取は、このがん細胞をさらに活性化させる原因になります。
  
 ガンにならないようにするには、活性酸素を減らすことと、脂肪分や塩分をなるべく控え、活性酸素から細胞を防御する働きのあるビタミン、ミネラル類をしっかりと摂取することです。
 体内でビタミンAに変換されるβ-カロチン、リコピンなどのカロテノイドや、ビタミンC、E、コエンザイムQ10、ミネラルのセレンなどは細胞の酸化を防ぐ抗酸化物質として知られています。
 ただし、ひとつの抗酸化物質がすべての活性酸素の除去に効果があるわけではなく、活性酸素の種類によって抗酸化物質も異なるので、これらの栄養素をバランスよく摂ることが重要です。
  
 環境汚染、電磁波、農薬や有害添加物入りの食べ物など、現代社会には活性酸素の発生量が増える要因がたくさんあります。活性酸素から身体を防御してくれるビタミン、ミネラル類は食事から充分に摂取することが理想です。
 ところが、野菜類に含まれるビタミン、ミネラルの量はここ30〜40年の間に半分以下、ひどいものでは10分の1にまで減少しているといわれています。 こうした状況において、ビタミン、ミネラルの不足を補うためにサプリメントを使用することも有効であるといえます。
 
  健康食品はガンを予防するか
 近年、この健康食品でガンが改善するとか、ガンを予防できるというような話をよく聞きます。それらの中にはガン患者を食い物にするような悪質な商法もあります。
  
 ガンの大きな原因となるのは「活性酸素」です。 したがって抗酸化作用のある成分を含む健康食品は、ある種のガンを予防できる可能性があるでしょう。
 しかし、ひとつの抗酸化物質がすべての活性酸素の除去に効果があるわけではないので、ある健康食品を摂取して効果があった人がいるからといって、それがすべての人に有効であるとは限らないことを理解しておくべきでしょう。
  
 活性酸素から身を守るためにの基本は、ビタミン、ミネラルバランスのとれた食事です。
カロテノイドやビタミンC、Eなど、抗酸化物質といわれるあらゆる栄養素を摂取できる食事を心掛けると良いでしょう。
   
 また、ストレスも体内に活性酸素を増やしてしまう原因になります。
ストレスを感じやすい環境の中で生活している人は、自分なりのストレス解消法を持っておくことと同時に、肉体疲労や精神疲労の回復に有効であるといわれるビタミンB1、ビタミンC、E、カルシウム、鉄、マグネシウムなどをしっかりと補給できる食事を摂ることが必要です。
  
 また、活性酸素を増やしてしまう食事というのがあります。
残留農薬や防腐剤などの食品添加物が多く含まれた食材は当然のことですが、塩分と脂質、とくに精製された食塩や動物性食品を大量に摂取すると、ガンになる危険性を増大してしまうことがあります。
さまざまな事情があって食事による栄養バランスがうまく図れない場合には、なるべく塩分、糖分、動物性脂肪の少ない食事を心掛けながら、マルチミネラルやマルチビタミンなど、総合的にビタミンやミネラルを補給できるサプリメントを摂取することが有効でしょう。
 
  ダイエットサプリメントの問題と危険性
 最近は実に多種多様なダイエットサプリメントが溢れています。
ダイエットに有効であるとうたわれて配合されている成分も商品によって実に様々な種類があり、いったいどれを選んだら痩せられるのかと迷ってしまう人も多いでしょう。  
  
 とくにマスコミ主導のダイエットサプリメントブームは、小出しの形で次々と有効成分が紹介されると、消費者はそれに振り回されて、特定の成分が含まれたサプリメントだけが短期間に大量消費されるという、一過性のブームを作る傾向があります。
 その割には、そのサプリメントで痩せたという人の話をあまり聞きません。
  
 このサイトの中で何度も繰り返して申し上げておりますが、ガンや生活習慣病の予防であれ、ダイエットであれ、特定の栄養素だけに偏った摂取をしても、それは偏食を助長させるだけであって、効果はないのです。
 もし特定の成分に特化したダイエットサプリメントで痩せたという人がいたとしても、その商品がダイエットに有効であるというわけではなく、その人は今までその商品に含まれている成分の摂取が不足していた、つまり偏食していたから肥満になったのだと理解したほうが良いかもしれません。
  
 また、ダイエットサプリメント業界は過当競争にあるため、見た目や味を良くするために人工香料や人工甘味料、合成着色料ほか様々な添加物を大量に入れている商品も少なくないようです。 添加物の中には、健康を害してしまう危険性があるものもあるので注意が必要です。
 たとえば、人工甘味料としてよく使用されるアスパルテームは、脳腫瘍を起こす危険性が指摘されており、また同じく甘味料であるステビアも不妊症や生殖器に対して毒性のある危険性が指摘されています。
 
 ダイエットのためには、糖質や脂質を摂り過ぎない食生活を心掛けるとともに、ビタミンとミネラルをバランス良く摂取することが大切です。 とくに、糖質、脂質を代謝する補酵素であり抗酸化作用もあるビタミンB2が重要になります。ただ、食品を加熱したときにビタミンB2は損失しやすいので、加熱しないでビタミンB2を摂取できる納豆などが有効であるといえます。
 食事の改善がなかなか実行できない方は、せめて糖分と脂肪分の少ない食事に切り替えて、マルチビタミン、マルチミネラルなど総合的に必須栄養素を補給できるサプリメントを摂取することが有効でしょう。