身体の健康と栄養のはなし   栄養学から考える食事と予防    ページ 2
  
  栄養素の種類
 人間が生命を維持するために必要な栄養素は、大きく分けて糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに分けられ、これらを五大栄養素といいます。
 これらの中でとくに必要量が多い糖質、脂質、たんぱく質、脂質は、体を動かすエネルギー源になる栄養素で、とくに三大栄養素と呼ばれています。
  
糖質は、穀類や砂糖などから得られ、炭水化物を構成する成分で主に脳・神経系のエネルギー源になります。
  
 脂質は、主に脂肪として蓄えられ、活動時のエネルギーとなる物質で、脂質には動物性脂肪、魚油、植物油があります。 陸上の動物に含まれるのは主に飽和脂肪酸であり、コレステロールを上昇させ、血液を流れにくくする性質があります。
 一方、青魚の脂肪に多く含まれるDHAやEPA、植物油に含まれるオイレン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラギドン酸などは不飽和脂肪酸に分類され、コレステロール値を下げ、生活習慣病を予防するといわれています。
  
 たんぱく質は、人体を構成する物質の中で水の次に多い物質で、筋肉や臓器、血液、皮膚などの主成分となります。また、生命を維持するための基礎的な働きをする酵素や、体内に入ってきた外的と戦う抗体もたんぱく質によってつくられます。
 たんぱく質は体内でアミノ酸に分解されますが、人体のたんぱく質を構成しているのは20種類あり、そのうち体内で合成することができないアミノ酸はイソロイシン、ロイシン、トリプトファンほか9種類あり、これらを必須アミノ酸と呼んでいます。
 ビタミンとミネラルは主に代謝と関係し、体調を整える重要な働きがあります。
 三大栄養素と比べて必要とする量は微量ですが、外食や加工食品の多い現代人に不足しがちな栄養素は、三大栄養素よりもビタミンとミネラルであるといえます。
 私たちが食べたものの栄養素は、体内で起こる化学反応によって消化・吸収されます。このような化学反応のことを“代謝”といいいます。 代謝には、そのほかに細胞の生まれ変わり、不要物の排出などあらゆる生理機能が含まれます。 この代謝を行なうためには、“酵素”という物質の働きが不可欠です。
 体内には数百種類の酵素が存在し、酵素の元は細胞でつくられますが、ビタミンやミネラルが加工されてつくられる補酵素と結合してはじめて機能します。
 
【栄養素の種類】
     三大栄養素・・・糖質、脂質、たんぱく質(プロテイン)
 ビタミン・・・水溶性/ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンC  脂溶性/ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK
 ビタミン様物質・・・イノシトール、コリン、コエンザイムQ10(ユビキノン)、PABA(パラアミノ安息香酸)、リポ酸、ビタミンP、ルチン、ビタミンU(キャベジン
 必須ミネラル・・必須ミネラル/カルシウム、リン、カリウム、イオウ、塩素、ナトリウム、マグネシウム  微量元素/鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロム、コバルト
 
  
  生活習慣別に栄養状態を考える
 人間が生命を維持させていくために不可欠な栄養素には、三大栄養素といわれる糖質、脂質、たんぱく質、そしてビタミン、ミネラル、食物繊維があります。
 それぞれに摂取必要量というものがあり、すべての栄養素を少なすぎず、多すぎず、バランスよく摂取することによって、はじめて健康が維持されます。 加工食品や外食に頼りがちな現代人にとって、とくにビタミンとミネラルは不足しがちになっています。  
【生活習慣から考える栄養素の過不足】
 現代人にはリンの過剰摂取が指摘されています。 リンは食品添加物(保存料)として加工食品や持ち帰り弁当、スナック菓子、清涼飲料水などに使用されており、また砂糖やアルコールにも多く含まれます。
 リンや糖分の多いこれらの食品を多量に摂取している人は、糖質の分解に関与する成分であるビタミンB1や血液中のヘモグロビンに含まれて全身へ酸素を運ぶ鉄、心臓や筋肉の機能調節をするカリウム、神経伝達や遺伝情報伝達に関わり抗ストレス作用のあるマグネシウム、酵素の働きに重要で遺伝子やタンパク質の合成を行う亜鉛など多くの栄養素が不足しがちになります。
 
 精製された食塩を多用している人はナトリウムの過剰摂取となり、細胞膜での物質交換を行なう成分として相反する働きをもつナトリウムとカリウムの比率が崩れカリウム不足になります。
 
 肉料理が好きな人は、免疫機能を維持したり皮膚の健康に関与する成分であるビタミンB6や、骨や歯の形成に関わり抗ストレス作用のあるカルシウム、そしてマグネシウムが不足しがちになります。
 
 逆に動物性食品を食べることが少ないベジタリアンの人は、ヘモグロビンを合成したり神経細胞を調整する成分であるビタミンB12や、亜鉛、さらには身体を活性酸素から守る抗酸化物質として働くコエンザイムQ10などが不足しがちになります。
 
 タバコをよく吸う人は、コラーゲンを生成し壊血病を予防するといわれているビタミンCが不足しがちになります。
 
 コーヒーの多量摂取は、脂肪やコレステロールの流れをよくする動脈硬化や肝脂肪を予防するといわれるイノシトールや鉄、カリウムが不足しがちになります。
 
 日常生活で日光に当たる機会が少ない人や、妊婦・授乳婦、5歳までの幼児、高齢者は、骨や歯の形成に関わる成分であるビタミンDやカルシウムの不足に注意する必要があります。
 
 妊婦・授乳婦は、このほかに細胞核の中で遺伝子情報を保存する核酸(DNA、RNA)の合成に不可欠で、また造血に働く葉酸や、骨の発育に不可欠で、また血液凝固因子を合成するビタミンKの不足に注意する必要があります。
 
 
  ビタミン・ミネラルの知識(1) ―水溶性ビタミン
 ビタミンは、水に溶ける水溶性ビタミン(ビタミンB群、C)と、水に溶けない脂溶性ビタミン(ビタミンA、E、D、K)があります。
   
以下、ビタミンの種類と役割について解説いたします。
【水溶性ビタミンの機能】
 ビタミンCは、コラーゲンの合成に働き、副腎皮質ホルモンの生成にも関与します。また、腸管において鉄や銅の吸収を高め、ヘモグロビンの合成を促進。さらに免疫力を高め、発ガン物質のニトロソアミンの生成を抑えます。 ビタミンCはブロッコリー、ピーマン、小松菜、いちご、柿、みかん、レモン、じゃがいもなど野菜、果物、いも類に多く含まれ、不足すると壊血病、骨粗しょう症、肌荒れ、心身症、感染症などのリスクが高くなります。
  
 ビタミンB1とは、砂糖などの糖質を分解する酵素の補酵素で、脳の中枢神経や手足の末梢神経を健康に保ち、精神を安定させます。  ビタミンB1は、大豆、胡麻、玄米のぬかや胚芽部分に多く含まれ、精白米を食べるようになった江戸時代に流行した脚気(かっけ)はビタミンB1欠乏症でした。 ビタミンB1が欠乏すると乳酸などの疲労物質がたまり、体が疲れやすくなり、また集中力がなくったり、脳や神経に障害が起こることがあります。
  
 ビタミンB2とは、脂質や糖質をエネルギーに変える酵素の補酵素、また抗酸化酵素の補酵素で、ダイエットに有効な栄養素であると言えます。 また、皮膚や粘膜を正常に保つ働きもあります。 ビタミンB2は干ししいたけ、納豆、レバーなどに多く含まれ、不足すると発育不良、目の障害、肌荒れなどの症状を起こすことがあります。 ビタミンB2、B6、ナイアシンは補完関係にあり、ひとつが不足すると他の二つも不足します。
 
 ナイアシンとは、ビタミンB群の一種で糖質や脂質をエネルギーに変える酵素やアルコール分解酵素の補酵素で、血行を良くし、血圧を下げ、脳神経の働きを促進します。 ナイアシンは落花生、タラコ、青魚、レバーなどに多く含まれ、不足するとペラグラ(消化器疾患を伴う皮膚炎)、胃腸障害、頭痛、ノイローゼなどの症状を起こすことがあります。 ナイアシンはビタミンB1、B2、B6が不足すると働きが低下します。
  
 ビタミンB6は、たんぱく質を代謝する酵素の補酵素として働き、神経伝達物質の合成に関与します。  ビタミンB6は玄米、バナナ、サケなどに多く含まれ、不足すると皮膚炎、抹消神経炎、不眠、食欲不振、脂肪肝などの症状を起こすことがあります。 また、ビタミンB6の欠乏はナイアシン欠乏にもつながります。
  
 ビタミンB12は、葉酸を助けて赤血球のヘモグロビンをつくります。 ビタミンB12は牡蠣、レバーをはじめすべての動物性食品に含まれますが、海苔など一部を除いて植物性食品にはほとんど含まれません。 ビタミンB12が不足すると貧血、神経過敏症、食欲不振などの症状を起こすことがあります。
  
 葉酸は、ビタミンB群の一種で細胞核の中で遺伝子情報を保存する核酸(DNA、RNA)の合成に不可欠で、細胞分裂を促します。またビタミンB12とともに赤血球を形成します。 葉酸は、海苔、枝豆、葉菜類、レバーなどに多く含まれまれていて、不足すると不足すると貧血、胎児や乳幼児の発育不全を起こすことがあります。
  
 ビオチンとは、ビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質、核酸の代謝に働く補酵素で、皮膚や粘膜を健康に保ち、最近ではアレルギーの抑制にも働くといわれています。 ビオチンは大豆、タマネギ、くるみ、レバーなどに多く含まれ、不足すると脱毛、白髪、皮膚炎などの原因になることがあります。 卵白に含まれるアビジンはビオチンを吸収を妨げます。 またビオチンは、ビタミンA、B2、B6、ナイアシンが不足すると働きません。
  
 バントテン酸はビタミンB5ともいわれ、糖質、脂質の代謝に働く補酵素で、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン、自律神経伝達物質、善玉コレステロールの生成に関与します。 パントテン酸という呼称は「あらゆるところ」という意味で、ほとんどの食品に含まれています。 ストレス緩和のためには、パントテン酸にビタミンCとビタミンEを組み合わせると効果的です。
 
  
  ビタミン・ミネラルの知識(2) ―脂溶性ビタミン
【脂溶性ビタミンの機能】
 水溶性ビタミンは尿と一緒に排出されやすいので多量摂取をしてもほとんど問題がありませんが、脂溶性ビタミンは欠乏症とともに過剰症にも注意する必要があります。
  
 ビタミンAは、皮膚、口腔、内臓などの上皮組織や粘膜を健康に保つ働きがあり、また免疫力を維持し、白内障のリスクを軽減させます。 ビタミンAが不足するとドライアイ、夜盲症、脱毛、免疫力の低下などの原因になることがあります。 ビタミンAにはレバーなど動物性食品に含まれるレチノールと、緑黄色野菜に含まれ体内でレチノールに変換される性質のあるβ-カロテンとがあり、レチノールを動物性食品から過剰摂取すると嘔吐、めまいや妊娠初期における胎児の奇形の原因になることがあるので注意が必要です。 摂取上限量は3000μg/日です。 β-カロテンは体内で必要な分だけレチノールに変換され、変換されなかったβ-カロテンには抗酸化作用があるため、生活習慣病の予防に役立ちます。
  
 ビタミンEは、強い抗酸化作用を持ち、脂質に含まれる脂肪酸が酸化して過酸化脂質になるのを防ぎ、また活性酸素から細胞膜を守る働きを持ちます。 さらにビタミンA、ビタミンC、β-カロテン、セレンなどの酸化も防ぐ老化防止の栄養素であるといえます。 ビタミンEはアーモンドなどのナッツ類やタラコ、ひまわり油、大豆油などら多く含まれ、不足すると肩こり、冷え性、呼吸器障害、更年期障害、動脈硬化などの症状の原因になることがあります。 ビタミンEの摂取上限量は600〜800mg/日で、過剰症になると血液が固まりにくくなるなどのリスクがあります。
  
 ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助けて骨や歯の形成に関与し、血中のカルシウム濃度を調節します。さらにビタミンAの吸収を促進する作用もあります。 ビタミンDは干ししいたけ、舞茸、乾燥きくらげ、サケ、サンマなどに多く含まれ、不足すると骨粗しょう症、くる病、X脚・O脚、虫歯などの原因になることがあります。 日常生活で適度に日光に当たっている人は欠乏する心配はありませんが、逆に日焼けをしすぎるとビタミンDの生成力は落ちます。 ビタミンDの摂取上限量は50μg/日で、過剰症になると嘔吐や下痢、腎障害などを起こすことがあります。
  
 ビタミンKとは、血液凝固因子を生成する酵素の補酵素です。出血時の血液凝固作用と当時に、血管内で有害な血液凝固を抑える成分の合成にも関与しています。 また、ビタミンDが必要に応じて骨から血液中にカルシウムを送り出すのに対してビタミンKはそれを抑制する働きがあり、骨の形成を促します。 ビタミンKは納豆、乾燥わかめ、シソ、ほうれん草などに多く含まれ、不足すると骨粗しょう症、出血症などの原因になることがあります。 食事摂取基準では上限量が設定されておりませんが、過剰症になると吐き気や呼吸困難、血圧低下などの症状を起こすことがあります。
  
 ※ ここに掲載した「上限量」とは、一般的に成人が過剰摂取による健康障害を起こさない最大栄養摂取量です。
 
  
  ビタミン・ミネラルの知識(3) ―ビタミン様物質
  
【ビタミン様物質の機能】
 
 ビタミンではないが、ビタミンのような働きをするものを、ビタミン様物質またはバイオファクターといいます。
 
 コエンザイムQ10とは脂溶性でユビキノンという化学名を持ち、細胞の中にあるミトコンドリア内で糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーを生産する酵素の補酵素です。 また強い抗酸化作用があり、体内脂質を活性酸素から守ります。 さらに精子を活発にし、免疫機能や白血球の作用を高めます。
 コエンザイムQ10は青魚、豆類、緑黄色野菜、レバーなどに含まれ、不足すると心疾患、糖尿病、高血圧、動脈硬化、動悸・息切れ、アレルギー、歯肉炎などのリスクが高まります。 過剰症の報告はありませんが、過剰摂取によりごくまれに下痢や嘔吐などの原因になることがあります。
  
 α−リポ酸とは、オクチトサンとも呼ばれ、パントテン酸やビタミンB1とともに働き、脂質やたんぱく質の代謝を促す補酵素です。血糖値を正常に保ち、肝臓の代謝を促進します。 また抗酸化作用をもち、同じく抗酸化物質であるビタミンCとビタミンEの効果を増強する働きがあります。 さらに最近ではダイエットやアンチエイジングに効果があるとされています。 水溶性でも脂溶性でもなく、水にも油にも溶けるため、体内のあらゆるところで働いています。 α−リポ酸は肉類や野菜に含まれますが、その量はわずかです。  不足すると、活性酸素の発生による様々な症状のリスクを高めます。
  
 イノシトールは水溶性で、脂肪やコレステロールの流れを促し、動脈硬化や肝脂肪を抑制します。 また神経機能の正常に保ちます。さらに髪の健康を維持し、湿疹を防ぎます。 イノシトールは果物や野菜、豆類、小麦胚芽などに多く含まれ、不足すると湿疹、脱毛、動脈硬化などのリスクが高まります。 コーヒーに含まれるカフェインはイノシトールを消費します。
 
 コリンは水溶性で、血管を拡張させて血液を下げるアセチルコリンの原料となります。またコレステロール値を正常に保ち、脳の記憶形成を助ける働きがあります。 コリンは、レバーや豆類に多く含まれ、不足すると体内でアセチルコリンやレシチンが作られなくなり、動脈硬化、心筋梗塞、記憶障害、高血圧などのリスクが高まります。
 
 
  ビタミン・ミネラルの知識(4) ―主要ミネラル
  
 ビタミンが動物や植物が体内で構成してつくり出した有機質であるのに対して、ミネラルとは、元素の形で存在する無機質のことをいいます。
    
 抗酸化物質は酵素反応の過程でミネラルを使用する必要があり、生物はミネラルが欠乏すると、死に至ることもありえます。
 生命維持のために欠かせない必須ミネラルには16種類あり、この中で体内に比較的多く存在するカルシウム、リン、カリウム、イオウ、塩素、ナトリウム、マグネシウムの種類は「主要ミネラル」と呼ばれ、極めて少量存在している鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロム、コバルトの9種類は「微量元素」と呼ばれています。
 
【主要ミネラル】
 
 カルシウムは、人の体内に最も多く存在しているミネラルで、日本人の平均的なカルシウム摂取量は不足しているといわれています。
 カルシウムの99%は骨に存在し、残りの1%程度が血液や筋肉、神経などに存在します。骨や歯の組織を形成するほか心臓の鼓動を打つ、神経を安定させる、血液の浸透圧やpH値を正常化する、アレルギー反応を抑えるなどさまざまな生理作用をもちます。
 カルシウムは、胡麻、高野豆腐、ひじき、煮干し、大根の葉、ほうれん草などに含まれますが、多く含む食品は少なく、また吸収率の低い食品も多いので意識して摂るように心掛けたい栄養素です。
 カルシウムが不足すると、骨粗しょう症、骨の形成障害、動脈硬化、神経過敏、イライラ、不整脈、腎臓結石などの症状の原因になることがあります。 骨の成長には、カルシウムのほかにビタミンD、ビタミンK、ビタミンC、マグネシウムなどの栄養素が必要です。
  
マグネシウムは、体内に存在する300種類以上の酵素系に必須なミネラルで、心臓や筋肉の働きを正常に保ち、精神安定、血圧の正常化などの働きももっています。 また、医療においては腎臓結石の治療に使われます。多くは骨や歯に蓄えられており、骨粗しょう症を予防するためにはカルシウムとマグネシウムのバランスが重要になります。 ストレスや、肉・加工食品などに含まれるリンもマグネシウムを減らす原因になります。
 マグネシウムは玄米などの精白していない穀類や野菜、豆腐、ナッツ類などに含まれ、マグネシウムが慢性的な欠乏症になると、虚血性心疾患が増え、突然死とも関係があるといわれています。
 
リンは、骨や歯の中でリン酸カルシウムとして存在しています。近年では冷凍食品、加工食品、インスタント食品、清涼飲料水、スナック菓子などに巾広くリン酸が使用されており、現代人のリンの過剰摂取が指摘されています。 リンを過剰摂取すると副甲状腺の機能が亢進してしまうほか、腎臓にも負担をかけます。 また腸内にリン酸カルシウムができ、カルシウムが吸収されずに体外に排出されてしまい、カルシウム欠乏となります。
  
 カリウムは、筋肉の収縮と弛緩の調整に働きます。 ナトリウムとは相反する関係にあって均衡を保っており、ナトリウムが細胞の外にあるのに対してカリウムは細胞壁の内側に存在し、細胞壁の内と外の物質交換に関与しています。
 カリウムを多少多く摂取してもほとんど問題ありませんが、ナトリウムを過剰摂取するとカリウムの欠乏症となります。また大量発汗やストレス、そしてコーヒーやアルコール、甘いものの摂取もカリウムを減らす原因になります。 カリウムはトマト、バナナ、ほうれん草、干しヒジキ、大豆、じゃがいもなどに含まれますが、不足すると高血圧、不整脈、心不全などの原因になることがあります。
  
 ナトリウムは、細胞の外側に存在し、細胞膜を通しての物質交換に働きます。
 塩化ナトリウムとして食塩の中に存在し、人間にとって不可欠な物質ですが、食塩は化学調味料や加工食品の中に多量に使用されており、現代人はナトリウムの取り過ぎ傾向があります。 ナトリウムの食事摂取基準は、成人男子で10g未満/日、成人女子で8g未満/日であり、過剰摂取すると高血圧、胃がん、動脈硬化などの症状の原因になることがあります。
  
  ビタミン・ミネラルの知識(5) ―微量元素
【微量元素】
 鉄は、ヘモグロビンと結びつき、肺から吸収した酸素を全身に運ぶ働きがあります。
 鉄はレバー、魚、ほうれん草などに含まれ、不足すると鉄欠乏性貧血、動悸・息切れ、思考力・集中力低下、幼児の発育障害などの原因になることがあります。 加工食品や清涼飲料水に含まれるリン酸は鉄の吸収を妨げます。
 
 銅は鉄とヘモグロビンを結びつける働きがあり、活性酸素の除去に働く酵素の補酵素となります。 銅は甲殻類、貝類、ナッツ類に多く含まれ、不足すると鉄欠乏症と同じような症状を起こすことがあります。
 
 亜鉛は、200種類以上の酵素の働きに関与し、遺伝子やタンパク質の合成を行ないます。また、アルコール依存症や味覚障害の治療に効果的だといわれています。
 亜鉛は魚介類に多く含まれ、不足すると皮膚炎、脱毛、味覚異常、免疫不全、情緒不安定、性機能不全などの原因になることがあります。 セレンやクロムと一緒に摂ると相乗効果が期待できます。 大豆製品に含まれるフィチン酸と亜鉛を一緒に摂ると、亜鉛の吸収が阻害されます。
 
 セレンは、体内で酸化された脂肪酸である過酸化脂質の分解に働き、抗酸化作用があります。 またビタミンEと協力して血液を流れやすくします。 セレンの抗酸化作用はビタミンEの50〜100倍ともいわれ、また水銀やカドミウムなどの有害物質の毒性を軽減する働きもあります。
 セレンは不足するとがん、心筋症、不妊症、白内障、抜け毛などのリスクが高まりますが、魚介類や蕎麦に多く含まれ、これらから摂取している日本人には欠乏症の心配はないといわれています。 野菜に含まれるセレンは、土壌のセレン含有量によって大きく左右されます。 セレンの摂取上限量は350〜400μg/日であり、過剰摂取すると中毒症が現れることがあります。
  
 マンガンは、活性酸素分解酵素SODの構成成分となるなど、様々な酵素の補酵素となります。
 マンガンは、土壌に含まれるマンガンが作物に吸収されるので、植物性成分に多く含まれ、不足すると生殖能力の低下、筋無力症、糖尿病などの原因になることがあります。 マンガンの摂取上限量は11mgであり、過剰摂取をすると中毒症状を起こすことがあります。
 クロムは、インスリンの作用を助け、血液中の中性脂肪やコレステロール値を正常に保つ働きがあります。動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病を防ぐ栄養素として注目されています。 糖分摂取の多い人はインスリンの分泌が多いためクロムが不足しがちになります。
 クロムは精白していない穀類、肉、魚に多く含まれます。野菜にも含まれますが、吸収率が低いと言われます。 白米にはほとんど含まれません。 ちなみに、人体に有用なのは三価クロムであり、環境汚染物質として知られているのは六価クロムです。