障害児急増の関連解明を (環境省の疫学調査)

 環境省は来年度から、環境中の有害化学物質が発育に及ぼす影響を、
胎児の段階から長期に追跡する十万人規模の疫学調査を行う。
近年、子どもの発育に「異変」が指摘され、発達障害などの発症は環境的要因との見方が強まったが、
厳密な疫学調査での根拠がないため、医療関係者の警告は推論の域を出なかった。

 異変の実態に、国はようやく重い腰を上げた。
緊急性が高い調査であり、化学物質との一定の相関性が認められれば、
原因とみられる物質を排除するための速やかな対策を講じてほしい。

 調査は、発達障害などの脳神経系の機能障害、
ぜんそくやアトピーなどの免疫系について化学物質の影響を見るものだ。
有害化学物質として例示したのは、ダイオキシンや水銀、鉛など五物質。
妊婦健診などで母親の血液や臍帯(さいたい)血で濃度を調べ、
その後も毎年、子どもの血液などから濃度を測り、
発症との関連を五年ごとに取りまとめるというものだ。

 ヒトの脳は血液脳関門に守られ、大人は血中に有害物質が入ってもすぐに脳に入らない。
しかし、胎児、乳児は関門が非常に薄く、
ごく微量の環境ホルモン(内分泌かく乱物質)や重金属が体内に入ると、
自閉症やADHD(注意欠陥多動性障害)などを引き起こす可能性は否定できないとの指摘がある。
ラットなどの動物実験では、有害物質の投与で多動などの発達障害の特徴をなす行動が見られる報告もある。

 この十年来、日本では学校での障害児の増加が著しい。
神奈川県の場合、養護学校の在籍児数は毎年二校分に匹敵する二百〜三百人ずつ増えている。
小中学校の特殊学級はさらにハイペースで、学級在籍児は十年前に比べ二倍近く増加している。
多くが自閉症、学習障害、多動性、衝動性など発達障害の特徴を示す子どもたちだ。

 障害の概念変化、
医学の進歩でこれまで埋もれていた障害児が
顕在化しただけの見かけの現象との見方もあったが、
障害児の急増現象の前では、見かけだけで説明しづらくなった。
環境省は「現段階では原因ははっきりしないが、
疫学調査で有害物質が自閉症などの発症に関係しているかどうか、
はっきりさせたい」(環境リスク調査室)と話す。
米国で一足早く今年から十万人規模の調査が始まったが、
日本も後れを取らぬよう本腰を入れようとしている。

 調査は、経年の変化をたどったデータ集積が必要とされる。
胎児段階では保護者の同意で調査できるが、
その後の追跡調査は乳幼児の意思確認が難しく、
十分な調査ができるのか懐疑的な声がある。
こうした難題をクリアして調査を進めてもらいたい。
将来に生まれてくる子どもの障害を避けるために不可欠な調査であり、
社会的コンセンサスも得られよう。

                           2007/08/07 神奈川新聞社の社説


この記事は、2007年8月07日「神奈川新聞ニュース」です、参考にしてください。


有害な化学物質での環境破壊・汚染、
身近にある有害化学物質の存在で
壊されていく生活環境、
免疫力の低下で壊れてゆく子どもたちの姿。

こうした取り組みが早く行われてほしかった。

一人一人の努力と気遣いで、

未来の地球環境と子どもたちを守ろう