■ 有害化学物質 ■
 

「ダイオキシン(1)-毒性」

「化学合成物質のなかで最も強い毒性をもつ」といわれるダイオキシン。
有害化学物質の代名詞として扱われ、毎日のように新聞・ニュースに登場する。
いったいどれほど危険な物質なのだろうか。その毒性について詳しく見ていくことにしよう。

■“毒性”って?

 通常、ある物質を動物に与えた時に動物が死亡したり、その組織や血液に異常を生じた時、
その物質は毒性を示すという。
毒性はその現れ方のスピードによって分類することができる。
一度の物質投与により比較的短期間(即時〜2週間)で毒性を示す場合を「急性毒性」、
何回にも分けて数カ月から2年間連続投与することによって毒性があらわれる場合を「慢性毒性」という。

 現れ方のスピードの他にも毒性には強さがあるが、
どのような指標で判断しているのだろうか。すぐに思いつくのは致死量であろう。
通常は、一定の実験動物を半数死亡させる投与量(半数致死量といい、
LD50(Lethal Dose 50)と書く)を体重1kg当たりに換算したものを用いる。
ただし、実験動物の種類によって毒性に対する感受性が大きく異なることも注意しなければならない。
モルモットはハムスターと比較して2000倍以上もダイオキシンに対して敏感である。

■ダイオキシンの種類

 現在、一般に使われている「ダイオキシン」という言葉は、
正確には「ダイオキシン類」と呼ぶべき化合物群の総称である。
ダイオキシン類は原子の並び方が少しでも異なると毒性が大きく異なるという性質を持っている。
単純に塩素が含まれているから毒性があるというわけではない。
ダイオキシン類のなかでもっとも強い毒性を持つのは
2,3,7,8-テトラ・クロロ・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン(1,3,7,8-TCDD)である。

 なお本稿では特に断らない限り、「ダイオキシン類」を「ダイオキシン」と表記し、
2,3,7,8-TCDDをその代表物質とする。

■ダイオキシンの急性毒性

「ダイオキシンは青酸カリの2万倍、サリンの数倍の毒性」といった表現をよく目にする。
この数値は前述の半数致死量LD50をもとにして算出されている。
表1は2,3,7,8-TCDDの急性毒性を他の毒性物質と比較したものである(実験動物はモルモット)。
この表より2,3,7,8-TCDDは青酸カリの15,000倍以上もの毒性があることがわかる
(1/15,000以下の量で同じ強さの毒性を示す)。
ダイオキシンの急性毒性がいかに強いかが理解できると思う。

しかしここで注意すべきこととしてダイオキシンの急性毒性の特徴である「遅延性致死毒性」がある。
ダイオキシンを大量に投与しても1日や2日では死なず、
実験動物では2〜6週間かけて体重が減少しながら死んでいく。
体内に入ると短時間で毒性があらわれ、死亡に至る青酸カリとは状況が異なる。
もちろん、死亡に至るまでの期間が長くても、その毒性の強さに変わりはない。

表1 ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)と
他の猛毒物質のモルモットにおける半数致死量LD50
毒性物質 LD50(ng/kg体重) 種類
ボツリヌス菌毒素D 0.32 細菌毒素
ボツリヌス菌毒素A 1.1 細菌毒素
破傷風菌毒素 1.7 細菌毒素
パリトキシン 50 イソギンチャク毒
2,3,7,8-TCDD 600 合成有機化合物
サキシトキシン 3400 プランクトン、貝の毒
テトロドトキシン 10000 フグ毒
α-アマニチン 300000 テングダケの毒
コブラ毒 500000 陸産蛇
青酸ガス 3000000 無機化合物
青酸カリ 10000000 無機化合物
四塩化炭素 4620000000 合成有機化合物


■ダイオキシンの慢性毒性

 長期間、微量に摂取し続けることによってあらわれる害というと、
すぐに思いあたるのが「発がん性」である。
世界保健機関(WHO)は1997年2月、
ダイオキシンの発がん性評価を「発がんの可能性がある」から「発がん性がある」に変更している。
実験動物の種類によって感受性が異なるが、
ラット・マウス・ハムスターなどでいずれも10〜70ng/kg体重/日という微量で作用し、
ダイオキシンは強い発がん性物質といえる。

 生殖機能に対する障害を「生殖毒性」と言う。
ダイオキシンは強い生殖毒性も持っている。
男性では精巣の萎縮、精子の減少、男性ホルモン濃度の低下を引き起こす。
女性の場合は子宮内膜症や妊娠率の低下、流産などの生殖障害があらわれる。
環境ホルモンとして内分泌撹乱作用を引き起こしているという指摘もある。
さらに、奇形といった先天性異常を引き起こすことも知られている(催奇形性)。

■恐いのは慢性毒性

 このようにダイオキシンは急性・慢性両方の強い毒性をもつ有害化学物質である。
「猛毒」と称される理由をおわかり頂けただろうか。
このような猛毒物質が環境中にばらまかれていたという事実は驚くべきことである。
ただ、私たちの普段の生活の中では急性毒性を示すほどの量を直接摂取することはまずない。

 だからといって、もちろん安心はできない。
ダイオキシンの真の恐ろしさは慢性毒性にあるからだ。
慢性毒性についてはまだまだわかっていないことも多い。
ダイオキシンの慢性毒性に関する、より詳しい調査・研究が待たれるとともに、
適切な排出規制・分解処理技術の確立も急がねばならない。


■ダイオキシンの名前

 ダイオキシンは、もともとは
「ポリ・クロロ・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン(poly-choloro-di-benzo-para-di-oxin,PCDD)」
という物質のことを指していた。
この名前のなかの
「ジ・オキシン(di-oxin)」の「ジ(di)」を「ダイ」と呼んだのが
「ダイオキシン(dioxin)」の名前の由来と言われている。

 すべての語句を説明すると、
ポリ:たくさん
クロロ:塩素
ジ:2つ
ベンゾ:ベンゼン環
パラ:向い合せに並んだ
オキシン:酸素

 つまり、ベンゼン環が2つ、2つの酸素を取り囲んで、
向い合わせにならんでいるもののいくつかの水素原子Hが
塩素原子Clと置き換えられたものを示している。

 2,3,7,8の位置の4つの水素原子Hが4つの塩素原子Clに置き換えられた物質が
最も強い毒性を示す2,3,7,8-テトラ・クロロ・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン(TCDD)である。
(“テトラ”は“4つ”を表す。)


図1 2,3,7,8-TCDDの図を参考に制作

■TEF、TEQ、TDIって何?

 本文中で、「ダイオキシンは正確にはダイオキシン類と表記すべき化合物群である」と書いた。
また、ダイオキシン類は原子の並び方が少しでも異なると毒性が大きく異なるという性質を持っている。
環境中に放出されているダイオキシン類全体での毒性の評価はどのように行われているのだろうか。

 2,3,7,8-TCDDはダイオキシン類の中でもっとも毒性が強く、研究も進んでいる。
そこで、この2,3,7,8-TCDDの毒性を“1”として、
他のダイオキシン類の毒性の強さを相対的に表すことが提案された。
これが、TEF(2,3,7,8-TCDD毒性等価係数、Toxicity Equivalency Factors)である。
2,3,7,8-TCDDと比べて10%の毒性ならばTEFは0.1となる。

 さらに、それぞれのダイオキシン類の実測濃度にTEFをかけた値の合計を
TEQ(2,3,7,8-TCDD毒性等価量、Toxicity Equivalency Quantity)という。
つまり、TEQとはさまざまな種類のダイオキシンの量を
2,3,7,8-TCDDならばどれぐらいの量になるかを見積もった値である。

 このTEQを用いて表現される基準値として、TDIというものがある。
TDIとは、耐用1日摂取量(Tolerable Daily Intake)のことで
、ヒトが一生摂取し続けても1日あたりこの量までは健康障害を起こさないと判断される量である。
例えば、「10pgTEQ/kg体重/日」と表され、これは体重1kgあたり1日に10pgTEQまでなら
健康障害を起こさないという意味である。
体重50kgの人であれば500pgTEQまでならば毎日摂取しても大丈夫だろうということになる。



「ダイオキシン(2) 発生から摂取まで」

 極めて強い毒性を持った合成化学物質「ダイオキシン」はいったいどのようにして発生し、
人間の体内に入ってくるのであろうか。その流れを追ってみる。

■どこから発生するの?

 環境庁の試算によれば、日本でのダイオキシンの年間排出量は約5300gTEQ(*1)である。
そのうちの約8割から9割が一般ごみの焼却によって発生している。
ダイオキシンの原料となる元素は、炭素H、塩素Clなどであるが、これらが焼却炉内で、ある温度になったときにダイオキシンが生成される。ダイオキシンが発生してしまう温度は300度から500度で、重金属を含んだ煤塵も触媒として働いてダイオキシン生成を加速する。また、酸素が不足した状態で不完全燃焼させた場合も発生するダイオキシン量が増加する。逆に、酸素が十分にあり、1200度で2秒以上燃焼ガスが滞留すればダイオキシン類はほぼ完全に分解されるという。

 焼却炉などでの燃焼過程以外でもダイオキシンは発生している。紙、パルプの塩素漂白過程である。漂白過程でできるダイオキシンは燃焼過程でできるものと違い、塩素のつく位置が毒性の強い2,3,7,8の位置を中心としている。これは「漂白パターン」と呼ばれ、主として2,3,7,8-TCDD(テトラ・クロロ・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン)、2,3,7,8-TCDF(テトラ・クロロ・ジ・ベンゾ・フラン)(*2)が生成されるのである。逆に燃焼過程では2,3,7,8-TCDD、2,3,7,8-TCDFは微小な成分となっている。このように多くの異性体(種類)を含み毒性の強いものが少ないパターンを「燃焼パターン」という。

 スウェーデンではダイオキシン対策が進んでいるといわれる。
日本の取り組みと比較してみても、早い時期から取り組んでいることがわかる。

1976 イタリア、セベソ事件 ダイオキシン大量飛散
スウェーデンのダイオキシン対策
1985 全焼却炉のダイオキシン調査
1986 ダイオキシンの規制値設定
1990 塩ビの包装材への使用禁止
1991 焼却炉の改造、フィルターの設置
1997/12 日本 ダイオキシンの規制値設定

(*1)TEQ:2,3,7,8-TCDD毒性等価量。
(*2)TCDF:ダイオキシン類の1つ。TCDDとよく似た構造をしている。

■ほとんどが食べ物から体に入る

 燃焼や漂白によって発生したダイオキシンはどのように環境中を移動し、
人間の体内に侵入するのであろうか。
ダイオキシンは現在では私たちの身の回りのどこにでも存在しているといえる。
そのため、水を飲んだり、土に触れたり、呼吸したりすることによってダイオキシンは体内に侵入する。
しかし、呼吸によって体内にとりこまれるダイオキシン量は
汚染の激しい都市部でも成人で1日あたり2から10pg程度である。
これに対し、近海魚や養殖魚などの魚から1日あたり約100pgものダイオキシンを摂取している。
このほか、肉類や野菜、穀物などからも1日あたり数10から100pg程度摂取している。
その結果、都市部の成人の摂取するダイオキシンの90%以上が食品を経由していると言われる。

 では、なぜ焼却炉で発生したダイオキシンが、
直接呼吸によって体内に入るよりも多く食べ物を通して摂取されるのだろうか。
その理由は生物濃縮という作用によって説明できる。

■食物連鎖による生物濃縮

 たとえば、湖の水に毒物が混入したとする。
その濃度は低く、生物には影響のない程度であっても、
植物プランクトン、動物プランクトン、小型の魚、大型の魚と食物連鎖が進むにつれて、
生物内の毒物の濃度が上がっていく。
最終的にもとの湖水の数万倍の濃度に濃縮された毒物により生物が死ぬことになる。
これを生物濃縮という。したがって、
「毒物は薄めて放流または排気してしまえばよい」とする考えは間違いといえる。

 生物濃縮が起こる条件は、
水に溶けにくく(水に溶かして体外に排出できない)、
肝臓などの体内で分解されにくいものが挙げられる。
ダイオキシンもこの条件にあてはまる。

 特に魚介類では生物濃縮倍率が高く、
魚を多く食べる日本人はダイオキシンの魚介類からの摂取が
60%に達するとの報告もある。

 海に囲まれ、魚介類を多く食べる私たち日本人は
その意味でもダイオキシン汚染の最先端にいるのかもしれない。


コラム

■ダイオキシンの体外への排出

 体内へ蓄積されたダイオキシンはどの程度の期間で体外へ排出されるのだろうか。 
ダイオキシンは無害であると考えたスイスのポワジェ教授が
少量のダイオキシンを飲んで、どのように排出されるかを調べた。
その結果は、最初の3日間で11.5%が尿を通して排出されたが、
残りは腸から吸収されて、脂肪組織に集まり、それから徐々に減少し、
半減期(半分になるのに必要な期間)は5年と推定された。 
また、ベトナム戦争で枯葉剤(通称オレンジ剤)が大量に散布されたが、
その任務に携わった人の追跡調査が行われ、その結果は半減期が約7年から11年であった。

報告者 Pirkie et al.
1989
Wolfe et al.
1994
Schlatter
1991
Gorski
1984
2,3,7,8-TCDD 7.1年
(ベトナム戦争退役軍人)
11.3年
(同左)
9.7年  
1,2,3,6,7,8-HxCDD       3.5年
1,2,3,4,6,7,8-HpCDD       3.2年
OCDD       5.7年
1,2,3,4,6,7,8-HpCDF       1.7年
OCDF       1.8年

ダイオキシンリスク検討会、1997.5(塩ビ環境協会「ダイオキシンなんでもQ&A」より)


表内の略称語句の説明
TCDD トリ・クロロ(四塩化)・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン
HxCDD ヘキサ・クロロ(六塩化)・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン
HpCDD ヘプタ・クロロ(七塩化)・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン
OCDD オクタ・クロロ(八塩化)・ジ・ベンゾ・パラ・ジ・オキシン
HpCDF ヘプタ・クロロ(七塩化)・ジ・ベンゾ・フラン
OCDF オクタ・クロロ(八塩化)・ジ・ベンゾ・フラン

(このコラムは、塩ビ環境協会が作成した冊子「ダイオキシンなんでもQ&A」を参考に作成した)



「ダイオキシン(3) 対策」

 今回はダイオキシンシリーズの最終回として、ダイオキシンに関する最近の技術動向について述べる。
環境庁の試算によれば、日本でのダイオキシンの約8割から9割が一般ごみの焼却によって発生している。
そのため、ダイオキシンの発生を抑えた廃棄物処理システムの開発が求められている。
また、発生したダイオキシンを分解する技術として、
「超臨界流体」を用いた方法が研究されているのであわせて紹介したい。

 ダイオキシンが発生しにくいゴミ処分方法や
ダイオキシン分解技術ももちろん必要な技術開発ではあるが、
ダイオキシンに対する根本的な解決は、ゴミそのものを出さないことである。
これについても最後に述べる。

■ガス化溶融炉

 ガス化溶融炉は処理するゴミをまずガス化炉にいれ、450〜550度Cで蒸し焼きにする。
ゴミは、高温ガスと輻射熱によって熱分解し、ガス化する。
発生した熱分解ガスはガス化炉の加熱用燃料として利用する。
続いて溶融炉でガスと残った灰(チャー)を1,300〜1,400度Cで燃焼する。
ガスは無害化し、残った灰はガラス状に固化する。
この方法では高温でゴミが処理されるためダイオキシンが発生しない。
(燃焼温度など株式会社 日立製作所「キルン式ガス化溶融システム」のものを参考にした。)

 さらに、ガス化溶融炉では高温の排熱を利用し蒸気を発生させることによる高効率の発電も可能である。

■超臨界流体

 ガス化溶融炉などの廃棄物処理システムは、
廃棄物の処理の際に生成されるダイオキシンを抑制するが、
すでに環境中に蓄積したダイオキシンを分解することは困難である。

 超臨界流体を用いた分解技術を用いることで、すでに存在するダイオキシンを分解することが可能となる。
では超臨界流体とは、いったいどのようなものか?

 物質は温度と圧力によって固体、液体、気体の3つの状態で存在する。
圧力が高く温度が低いと分子どうしがかたく結びついた固体の状態となる。
さらに温度をあげると結びつきが少し弱くなり液体となる。
さらに、温度をあげると分子が激しく動き回るようになる。
やがて分子どうしの結びつきが解け、自由に動き回る気体となる。

 しかし、ある一定以上の高温の気体に、
ある一定以上の圧力が加わると「超臨界流体(Super Critical Fluid)」とよばれる状態になる。
つまり、圧力が高く、温度も高い状態である。
水の場合は374.1度C以上でかつ218気圧以上にすると「超臨界水」となる。

scf

 超臨界流体は気体と同じように大きな運動エネルギーを持つ。
つまり分子が激しく高速で動き回っている状態だ。
さらに、液体に匹敵する高い分子密度を持っている。

 超臨界水は私たちが通常イメージしている水とはかけ離れた性質をもっている。
非常に激しい反応性である。超臨界水のなかではほとんどすべての有機物が分解されてしまう。
化学的な安定性では定評のあるフロンでさえ、数分以内に完全に分解され、
二酸化炭素、水、ハロゲン化水素になってしまう。
超臨界水の中では、高温の水蒸気なみの高速の水分子が、
液体の水に匹敵する高密度で次から次へと衝突するので、
有機物は短時間でばらばらになってしまうのだ。

 通産商工業技術院の佐古猛らによれば400度C、300気圧の超臨界水を用いて、
焼却飛灰中の高濃度のダイオキシン類をほぼ100%分解することに成功したと報告している。

 超臨界流体によるダイオキシン類の分解の特徴は、
環境に対して無害な水と酸化剤で猛毒のダイオキシン類を短時間で完全に分解でき、
分解装置の構造が単純である点である。

 超臨界流体による分解はもちろんダイオキシンだけにとどまらず、
PCB(ポリ塩化ビフェニル)の分解にも有効であるとされている。

 超臨界流体によるダイオキシン分解の実用化に向けて本格的な実証実験が始まろうとしている。
この技術が実用化されればダイオキシンなど有害化学物質の分解における切り札となるかもしれない。

参考文献:ニュートン4月号臨時増刊「人体・環境異変 破局か再生か 
最新エコ・プロジェクトの挑戦」ニュートンプレス(1999)

■ゴミを出さないことがダイオキシン対策

 ここまで、ダイオキシンが発生しないゴミ処理法(ガス化溶融炉)と
ダイオキシンなどの有害化学物質を分解する技術(超臨界流体)を見てきたが、
ダイオキシン対策にもっとも有効で根本的な解決法は
ゴミそのものを出さないことである。

冒頭にも書いたように
日本のダイオキシン発生量の8割から9割が一般ゴミの焼却によるものである。
ゴミがなければその焼却によるダイオキシンの発生も未然に防ぐことができる。

 単にゴミになるものの使用を控えるだけでなく、
ゴミそのものが出ないような仕組みを作り上げることも必要である。

 ゴミが出ない(ゼロ・エミッション)社会構造は、
有害化学物質の発生抑制に対しても有効な概念であり、
ダイオキシン問題はその典型的な例でもある。

 ゼロ・エミッションでは、ある産業から出た廃棄物を別の産業の原料とすることにより、
廃棄物をゼロにしようという考え方である。
これまで単純に焼却処分されていた一般ゴミの再利用を考慮することで、
ダイオキシンをはじめ多くの有害化学物質の発生を抑制することも可能になるだろう。

 環境問題は数々の要素が複雑に絡みあった問題で、
全体を見通し、バランスのとれた解決法が必要不可欠である。
ゼロ・エミッションは、環境問題解決の根幹をなす概念のひとつと言えるだろう。

■参考文献

「ダイオキシン」宮田秀明、岩波新書(1999)
「環境ホルモン きちんと理解したい人のために」筏義人、講談社(1998)
「ダイオキシン 100の知識」左巻建男ら編著、東京書籍(1998)
「化学物質 環境・安全管理用語辞典」環境・安全管理用語編集委員会 編、
化学工業日報社(1998)
「地球を守る企業戦略」藤森敬三、日本電気文化センター(1992)
ニュートン4月号臨時増刊「人体・環境異変 破局か再生か 
最新エコ・プロジェクトの挑戦」ニュートンプレス(1999)