有機水銀の危険性

2.有機水銀とは


水銀とは、銀色をした重金属で常温では液体の状態で存在している。
この液体水銀の膨張や収縮を利用して、温度計や血圧計が作られる。
液体水銀は自分たちでまとまろうとする力が大変強く、
こぼれても水滴のように丸くころころして存在する。
この水銀は有機物と反応して化合物になる。


特にメチルアルコールの基になっているメチル基と呼ばれるものにつきやすく、
簡単に有機水銀が誕生する。
これがメチル水銀と呼ばれる水俣病の原因になった物質である。


また、エチルアルコールの基になっているエチル基につくと、
エチル水銀となりインフルエンザや日本脳炎などの予防接種を行う
ワクチンの防腐剤として使用されている物質である。


このワクチンの中に含まれるエチル水銀から作られる
「チメロサール」という防腐剤が、
自閉症の原因になるとして、アメリカでは裁判が続いている。


一般的に、有機水銀と呼ばれ警戒する物質は、
この2種類と受け止めておけばよいと思う。
もちろん他の化合物も存在している。


以前は、学校の保健室に「赤チン」と呼ばれる消毒薬が常備されていた。
この赤チンの主成分は水銀化合物である。

水銀は神経に作用して痛みを押さえる働きも持っている。
赤チンを使うのは殺菌目的と同時に痛みを抑えるためでもある。
年配の方ならほとんどの人が赤チンのお世話になった経験があると思う。


しかし、水俣病をきっかけに、水銀の持つ毒性が指摘され、
この水銀の神経に作用する働きが問題となり、
学校の保健室から赤チンは消えていった。


しかし、水銀を殺虫剤や殺菌剤として現在も利用されているのは、
原料が安くて効果的で、企業に大きな利益をもたらすためといわれている。


そして殺虫、殺菌目的に使用した有機水銀は、
呼吸器などで吸収されると「システイン」というアミノ酸に結合し、
消化器管から栄養分と一緒に吸収され
体内の腎臓や肝臓に蓄積されると同時に、
脳に達するといわれている。


人間の脳は、生命を維持するコントロールタワーであり、
そこには血液脳関門と呼ばれる脳を有害な物質や毒物から守る仕組みが存在するが、
システインについた水銀はこの関門を通過してしまうと言われている。

「危険食品読本」(椎名玲・吉仲由紀著、文春文庫)では、
国立水俣病総合研究センターの坂本峰至部長のコメントや、
熊本学園大学社会福祉学部の原田正純教授のコメントが  
詳しく記載されている。


一部を紹介すると
「メチル水銀による健康障害は、神経症状が主な病状です。
病状の程度は、取り込んだ量や時期、年齢によって異なってきます。
かっての水俣病のように成人の中毒症状が感覚障害(じんじん感、触れられても感じにくい)や、
小脳失調(まっすぐ歩きにくい、動作がスムーズに出来ないなど)、
視野障害、聴覚障害であるのに対し、
胎児期にメチル水銀中毒が起こると脳性麻痺や知能障害が起こります」とある。


分からない、知らないということは、なんと恐ろしいことなのか。
赤チンに含まれている水銀化合物が、
こんな問題につながっていることを私たちは知らなかったし、
知らせてもらうことも出来なかった。


また、

「妊婦が微量の水銀を摂取することによって、
へその緒から水銀が胎児に移行して、
生まれた子供が集中力や注意力、記憶力が乏しかったり、
細かい運動が出来ないなどの機能障害が出るというレポートは
すでに発表されています。

日本は水俣病の教訓がありながら、
なかなか妊婦に注意を呼びかけようとしなかった。
昔から国民に対して情報提示が正確でなかったことが、
一般消費者の恐怖をあおる結果を引き起こしてしまった。」とある。



こうなると、誰もが聞き流して終わるわけにはいかなくなる。
有機水銀汚染の問題は、お母さんの胎盤の問題になり、
最後には胎児である赤ちゃんの問題になってゆく。

水俣地域の人たちだけの問題でなく、
全ての子どもたちの問題であり、
未来への問題です。